私たちは壁をつくることができる

2021, 二面映像インスタレーション
撮影:リョウイチ・カワジリ
写真提供:札幌文化芸術交流センター SCARTS

映像には、人、カタツムリ、お掃除ロボットが登場します。3者は一見同じ地平にいながらも、見えない「壁」(VR空間、木酢液、赤外線)によって区切られた行動範囲の中で、お互いが交わることなく過ごしています。「壁」の位置が切り替わると、3者はそれぞれ他の存在がいた地面に移動していきます。展示されている床面に目を凝らせば、彼らの行動の痕跡を見つけることができます。


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この作品は、2021年9−10月に札幌で行われた、リモート時代のテクノロジーをテーマとした展覧会「遠い誰か、ことのありか」のために作られた。

コロナ禍で、Zoomなどの、遠いところにいる人とつながるためのテクノロジーが注目されたが、同時に近くにいるものを分断するためのテクノロジーにも気づくことになった。例えば、手のひらに付着したウイルスを除去する、アルコールスプレーのような。ロックダウンで人のいなくなった街に、たくさんの野生のヤギがやってきた、というニュースもあった。ロックダウン以前に街とヤギの生息地との間に柵や壁があったわけでなく、彼らはおそらく自動車の音や排気ガスや人の気配によって、街からしぜんと排除されていたんだろう。

アルコールスプレーや排気ガスのように、私たち人間は意図的に/非意図的に、人間以外の他者に対して、さまざまな壁をつくりながら暮らしている。

私たちは壁を作ることができるが、それは同時に、私たちは壁を壊したり、動かしたり、一時的に移動させたりもできる、ということかもしれない。それは壁というよりむしろ、仕切りのように、ふすまのように。

私のための場所は、たまに誰かのための場所になったり、誰かと私が出会ったりすれちがったり交信したりする場所になったりすることも、できるんじゃないか。しなやかな生態系に近い街や家や部屋、というものを想像する。